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うまくいかないことも多い夫婦関係。なぜそうなってしまうの?【ママのこまりごと・前編】

愛し合って結婚したはずなのに、今はぶつかってばかり−−。そんな悩みを抱える夫婦も少なくありません。良好な夫婦関係を築いていくにはどうすればいいのでしょうか? 臨床心理士・家族心理士としてカップル・セラピーに取り組む、野末武義さんにお話を伺いました。今回は、その前編をお届けします。(後編は8月9日公開予定です。)

野末 武義(のずえ・たけよし)さん
IPI統合的心理療法研究所所長。明治学院大学心理学部心理学科教授。臨床心理士、家族心理士。家族とコミュニケーションの専門家として、夫婦・親子・家族のカウンセリングに取り組んでいます。
著書:「夫婦・カップルのためのアサーション」(金子書房)

 

うまくいかないことも多い夫婦関係。なぜ、そうなってしまうのでしょうか?

一番は、夫婦は強い愛情で結ばれた特別な関係であるはずだという、大きな期待があるからでしょう。期待が大きいぶん、期待通りにならなかった時に激しく失望したり、相手を強く責めたりしてしまうのです。

私はカップル・セラピーに取り組んでもう25年以上になりますが、夫婦のカウンセリングをしていると「うちと一緒だな…」「これは僕も妻に言われていることだ…」と身につまされることはしょっちゅうですよ(笑)。

つまり、夫婦の問題のほとんどは、2人の特殊な事情などではなく、多くの夫婦に見られる一般的な問題なのです。「自分たちだけがおかしい」などと、特殊な問題だと思う必要はないんですよ。

 

よく「性格の不一致」などと言いますが…。

そもそも、どんなに愛し合っていても二人は別の人間。一致することはないんですね。夫婦であろうと、自分にとって大切なことが相手にも大切とは限らないし、二人が同じことを考え、同じように感じることは、あったとしてもごく稀でしょう。たとえ違う人と結婚したとしても、また問題が起きる可能性が非常に高いです。

夫婦の問題の根本は、ほとんどがコミュニケーションの問題。シンプルに言えば、「ちゃんと聴く」「ちゃんと伝える」ができていないのです。

 

聴いているし、伝えている、という夫婦も多いのでは?

確かに、耳では聞いているし、言ってはいるのかもしれません。よくあるのは、何か言われたときに「ふーん、でも私は」などとかぶせてしまうパターン。これは相手の言うことを理解しようとしていないので、ちゃんと聴いていることにはなりません。「私はこんなに家事をやっているのに、どうして何もしてくれないのよ!」などと言うのも、感情をぶつけているのであって、ちゃんと伝えていることにはなりません。

「ちゃんと聴く」とは、相手の気持ちや考え、状況を理解しようとすること。「ちゃんと伝える」とは、自分の感情や考えを相手に伝わるように、冷静に表現することです。

 

具体的にはどういうことでしょうか?

たとえばカウンセリングでは、妻が「夫が家事をしない」と主張したら、私たちカウンセラーは夫の方にも必ず、仕事の状況や今どんなストレスを抱えているのかなどを細かく聴きます。するとそこで初めて、カウンセラーも妻も、夫が実は大変な仕事を抱えていて、時間的にも精神的にも余裕がないことを知ることも珍しくありません。それまで妻は夫の話を聴いていなかったし、夫も妻に伝えることができていなかったんですね。

事情がわかると、妻は落ち着きを取り戻して夫を責めなくなります。夫も、話を聴いてもらえたことや責められなくなったことで安心でき、自然と家事を手伝うようになることも珍しくありません。

夫婦といっても他人同士、考え方が一致しないのは当たり前。だからこそ、コミュニケーションをしてお互いに「歩み寄る」ことが大切なのです。

 

2人が、それぞれ別の人間であると認識することも大切なんですね。

そうです。それには、お互いが自立することが必要です。自立とは経済力を持つことではなく、自分のことも相手のことも、欠点や自分とは違う部分も含めて、ありのままに受け容れられること。自立していれば、相手に過剰な要求や期待はしなくなるし、意見が違っても大きな不安や強い不満を抱かないですみます。お互いに認め合い、支え合えることができるのです。

 

information

「夫婦・カップルのためのアサーション」
著:野末武義 発行:金子書房

「アサーション」とは、自分も相手も大切にする自己表現。パートナーとの関係を見つめ直し、より親密なコミュニケーションができるようになるにはどうすればいいか、専門家がわかりやすく解説しています。夫婦間のコミュニケーション・スキルを磨くエクササイズも紹介。

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